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東京工芸大学における21世紀COEプログラムの意義 |
学長 本多健一 |
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21世紀COEプログラムは、文部科学省が平成14年度から開始した重点的研究拠点形成計画で、日本の大学が世界のトップレベルの教育・研究拠点となるように、特に国際的に突出している研究組織を日本におけるその分野の研究拠点として位置付け、学術分野の推進、先導をしてもらうことを目的とするものであります。このたび、本学の建築学専攻「都市・建築物へのウインド・イフェクト」がこの21世紀COEプログラムに採択されました。この研究テーマは、強風災害の低減、自然エネルギーを有効利用した通風換気、建築物内外の空気汚染防除の3つの課題から構成されており、これらは、21世紀の都市に生活する人類には避けて通れない問題です。
人間文明の進歩は凄い勢いで進んでいますが、そのひとつの成果は都市であります。アーバン(都市)に対してルーラルという言葉があります。人間をはじめとする生物は本来ルーラルであったのですが、人間だけがアーバンというものを作り上げた。他の生物社会ではアーバンライフというものを知らないわけです。このアーバンという論理を振り返ることなく追求していったのではどこかで壁にぶち当たるか、どこからか危険な状態に入っていく恐れが非常にあります。今人類は科学技術の進歩とアーバンライフの豊かさで驕り高ぶっているから、いつかは、おそらく今世紀中にでもしっぺ返しを大自然から受ける可能性があります。都市の建築物などは地震、強風などの自然災害に対して十分安全性を検討しなくてはなりません。
一方、今日、都市化は、高度情報化社会と同等と言っても過言ではなりません。この高度情報化社会の議論の中で全く欠けている視点があり、それがエネルギーなのです。高度情報化社会はエネルギーの膨大な消費を伴うということをみんな無視しているか、気が付いていない。建築物におけるエネルギーの消費は冷暖房ももちろんありますが、コンピュータすなわち情報機器の普及も隠れた存在であります。このエネルギー大量消費システムに対して、自然エネルギーを利用した通風換気、空気汚染の問題を考えていくことは21世紀の都市に生きる人類の課題でもあります。
これらの課題に取り組む本研究プログラムは、東京工芸大学「風工学研究センター」を中核として形成されます。本学では、大型の総合大学に見られる、学部の上に大学院を同様に配置する積み上げ方式ではなく、幾つかの研究センターおいて重点的に研究を進める多峰方式を採用しており、「風工学研究センター」はその重点研究組織のひとつでもあります。このセンター方式による全学的支援の下、学術的水準をより高め推進するのと同時に、研究者・専門家・後継者を養成してまいります。さらに、それを日本の中だけにとどまらず世界にまで広げていく、あるいは情報を発信していく。まずは日本近辺東南アジアの国々と意見交換を行い、共同研究や後継者の養成も21世紀COEプログラムにのっとって本学が中心拠点となって引っ張っていく位置付けがあります。東南アジアから、さらには世界に発信していきたいと言うことです。
このような重要なプロジェクトの進路を正しく保つには、自己点検評価、さらには、第三者による外部評価が不可欠であります。社会の変化に伴い、大学という限られた範囲のコミュニティーでの常識が通用しなくなっています。私たちはそのことに気づかなくてはなりません。幸い、本プログラムでは、国内はもとより海外の専門家をアドバイザリーボードとして招き、自己の進路を客観的に見つめなおす計画を持っています。
地球環境や人類に対する愛情に動機付けられた情熱的な研究・教育、そして時に自身を振りかえる冷静な視点を忘れずに本研究プロジェクトが積極的に推進されることを期待します。
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